猫の湯~きみと離れていなければ~
「仁なんかに使ったらもったいないにゃ」
倫はそう言うと部屋をとびだした。
「倫様、どこにお出かけなのですか?」
「待ってにゃん」
遇と宮は慌てて追いかけた。
仁は震えで動けないみたい。
という、遇が『倫様』って呼んだのをわたしは聞きのがさなかった。
わたしも金と銀を抱っこすると、後に続いた。
おにぎり合計4つ分でさっきより確実に重くなってる。
庭に出た倫はピョンピョンと身軽に跳ねて屋根の上に昇ると、鳳凰像の側に立った。
「やっぱりにゃ! 」
そう言うと、対になっている鳳凰像の目の中に猫玉を1つずつはめこんだ。
「思ったとおりぴったりにゃ」
その途端、鳳凰像はまばゆいほどに光りだし、その光は柱となって夜の空を貫いた。
祭りに参加していた猫たちも騒ぎに気づき何事かと周囲に集まってきた。
そして光の柱がゆっくりとおさまってくると、今度は鳳凰像が赤と金色の炎をまとわせはじめた。