猫の湯~きみと離れていなければ~
「倫っ、熱くないにゃん? 早く降りてきてにゃん」
「危ないから戻ってきなっ」
心配して泣きだした宮。
側にあるはしごにも気づかずに屋根によじ登りはじめた遇は、着物が汚れてしまうのなんて全く気にも留めていない。
心配する遇と宮には気がつかずに、倫は大喜びしてピョンピョンはねている。
「鳳凰像に命が宿ったにゃー! これで猫の湯は安泰、みんなずっと一緒だにゃー!」
『みんなとずっと一緒にいたい』
これが倫の願いなんだね。
「愚かな子だねぇ、お前は。そんなことに願いを使っちまったのかい? 」
倫の側についた遇は乱れた着物も整えもせずに寂しそう
に鳳凰像を眺めた。
「そんなことないにゃ! 」
倫が怒ったように、でも悲しそうに遇に訴えかけている。
「本当に愚かな子だよ」
遇は倫を引き寄せると子供をあやすように背中をぽんぽんと叩いた。
「家族なんだからずっと一緒に決まっているじゃないか。そんなこともわからなかったのかい? 」
「……、女将さぁんっ」