猫の湯~きみと離れていなければ~
副会長はうんうんと満足したように屋根の上で抱きしめあう2匹をながめている。
「どんな天気だろうが毎日かかさずに、願いをこめて像を磨いていた倫だから、目の秘密に気がつけたんだろうな」
そういえば、わたしがここに来たときも、倫はあの像を磨いていた。
「りんはずっとおねがいしてたよー」
「かぞくになりたいんだってー」
金と銀は小さな手で、わたしの涙をペタペタとふきながらおしえてくれた。
「倫は血が繋がっていないのを気にしていたんだろうな。くだらんことを」
「わたしから見れば仲のいい家族なのに」
「誰でも自分のことになると分からなくなるものなのだろうな」
副会長はわたしに何か言いたそうにニタニタ笑っている。
上から目線で見透かされているみたいで少しむかつく。
でも嫌じゃないかな。
「よし鈴、そろそろ行くぞ」
「…うん」