猫の湯~きみと離れていなければ~
ようやく神社の前にたどり着いた。
夜更けということもあってか、参拝客はさっきよりは少なくなっているようで。
神社の急な階段を、…多分80段ぐらいまでは数えれていたと思う。息切れで足を止めたときに、いつの間にか眠ってしまっている金と銀の寝顔に心を奪われてしまって何段まで数えたかすっかり忘れてしまった。
その階段を上まで登ると、何匹かの猫と観光客たちが階段に腰かけて町を見下ろしていた。
わたしも何気に振り返えってみると、ここからは猫町が一望できて、その光景に見とれてしまう。
門から入ったときはまったく気がつかなかったけれど、この町は丸い形をしていた。
いたるところに提灯が飾られ、町全体が赤い光に染まっていて、特に大通りは提灯が集中していてるから赤く浮き上がり、神社と大門を一直線につないでいる。
そして鳳凰が飛来したときに舞い描いた光の流線は、いまだに空中に残っていた。
この幻想的な景色は猫玉、そして陽向がくれたとんぼ玉を思い浮かべずにはいられない。
大通りの一部にけばけばしい灯りが見えるのは、多分龍宮城がある付近。
通りを挟んで右側の奥で輝いている一点は、猫の湯だと思う。