猫の湯~きみと離れていなければ~

「すずー、あげるー」
「なかないのー」


気持ちが落ちついてくると、金と銀がスカートを引っ張ってわたしの気をひいた。その手には黄色い小さな花を持っている。


「ありがとう。なんていうお花なの?」

「しらないのー」
「でもげんきになるのー」


涙をふきながら、しゃがんで受け取ろうとするわたしの髪に、金と銀はその花を飾ってくれた。
少しくすぐったくて笑ってしまうと、金と銀もうれしそうに笑い返してくる。


「それは福寿草といい、雪解けの春を告げ、大切な人のしあわせを思う花です」

「ふくじゅそう? 」


鳳凰が金と銀にかわって教えてくれた。


初めて聞いた名前。
でもどこかで見たことがある気がする。


「素敵なお花をありがとうね。おかげで元気になったよ」


そうお礼を言うと金と銀はうれしそうに目を細めた。


わたしのせいで鳳凰は大切な家臣を失ない、金と銀は兄弟のような存在を失なってしまった。


なのにわたしの心を救ってくれた。


わたしも何かしてあげたい。

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