猫の湯~きみと離れていなければ~
「猫ちゃんは、…生きているの? 」
驚いているわたしをみて、鳳凰はうれしそうに笑いだした。
「大切にされていて、もうこんなに大きくなっていますよ」
鳳凰は今度は銀を優しくなでて、姿を変えさせた。
白黒のはちわれ模様の猫。
金色の瞳と、副会長とは全然違う美形な顔立ち。
…ちょっと待って? わたしこの猫を知ってる?!
ポケットからスマホを取り出そうとするけれど、慌てているせいでなかなか出てこない。
力まかせに無理矢理取り出して、メッセージアプリを開いた。
……やっぱり、このアイコン
『あー、これうちのお猫様なんだ』
わたしは全身の力が抜けて、ペタンと座りこんでしまった。
「…生きててくれた」
流しつくしたと思っていた涙がまた頬を伝いはじめた。
どうして陽向が猫ちゃんを飼っているの?
どうして教えてくれなかったの?
でも今はそんなことよりも
生きててくれた
それだけでよかった。