猫の湯~きみと離れていなければ~
「鈴、貴女をここにお呼びした理由がもう1つあります」
鳳凰は副会長に目配せすると、副会長がわたしの前に手のひらサイズの赤い座布団を差し出した。
手で涙をぬぐってよく見ると、その上には陽向がくれた物にそっくりなとんぼ玉が1つのっている。
でもそのとんぼ玉には黄色い小花は咲いていないし、金色の流線は動いていない。
「これは凰玉(おうぎょく)。鳳凰様の霊力がこめられている」
副会長はそう言うとわたしの首に凰玉をかけた。
いつもと同じでしっくりとくる慣れた重さ。
やっぱりそっか。
猫玉をみたときから予感はしていたけれど、陽向もここに来たことがあるんだね。
「私からの気持ちを受け取ってはいただけませんか? 」
遇なら2つ返事でもらってしまいそうだけれど。
「でもわたし、商売繁盛とか必要ないです」
「おいおい猫玉と一緒にするなよ。凰玉は格が違っ、にゃぎゃっ! 」
バカにされたと思ったのか、金と銀が副会長のすねにかぶりついた。