猫の湯~きみと離れていなければ~
鳳凰はその光景をふふっと笑いながらわたしにつけ足してきた。
「それは貴女の望みをなんでも叶えてくれます。億万長者でも不老不死でも世界征服でも、死者を生き返らせることも…」
そんな怖い、というかすごい物をわたしになんかあげてもいいの?
でも、はっきりいってどれも興味がないし。
「そして、好きな人の心を振り向かせることもできるのです」
一瞬、陽向の笑顔が脳裏をかすめたけれど。
でもそんな力で振り向かせたところで虚しくなるだけのような気がするし、相手を尊重していないような気になる。
「あの、…おたずねしてもいいですか?」
わたしの質問に鳳凰はゆっくりとうなずいた。
「陽向は、…逢坂 陽向は何を願ったのですか? どうしてわたしに凰玉をくれたのかをご存知ですか? 」
「願ったものが凰玉に現れていますよ。…陽向の福寿草はしぼむことも枯れることもなく見事に咲き続けていますね」
陽向の凰玉に咲いている花は福寿草
『雪解けの春を告げ、大切な人のしあわせを思う花』
それが陽向の願い
だって、あの頃のちび陽向なら『毎日ハンバーグが食べたい』とか『海賊シャークの船長になる』って願いそうなのに。
『鈴がいっぱいわらっていますように』
わたしのしあわせを願ってくれていた。
そして今もずっと福寿草は咲いている。
それなら
―― わたしは陽向のために