猫の湯~きみと離れていなければ~
教室の入り口に貼られている座席表。
―― 風森 鈴
わたしの席は1列目の最後尾、そして1つ前の席は
―― 逢坂 陽向
50音順で決められているのだから、こうなってしまう予感はあったのだけれど。
なんのへんてつもない横開きの入り口が分厚く重い扉のように感じる。
なのに手を添えると、簡単にガラッと開く軽さと音に戸惑いを感じながら気配を消すように教室に入った。
教室内は思ったよりも緊張感はないみたい。
同じクラスになれたことを喜び合う生徒たちや、自己紹介をし合う生徒たちで賑わっていて、わたしが入って来たことを気に止める生徒は誰もいない。
わたしの前の席には主の姿はなくてホッとはしたけれど、イスに座りながら無意識に陽向の姿を探してしまった。