猫の湯~きみと離れていなければ~
「決まったようですね」
「…はい」
わたしはゆっくりとうなずくと、凰玉を外した。
「お前、 どういうつもりにゃ? 」
副会長は鳳凰に対して無礼だという驚いた顔をしている。
それに、今も絶対にバカな奴だって思っているに違いないよね。
「だって、わたしには必要のないものだから」
わたしのしあわせが陽向の願いなら、陽向の願いをわたしがかなえてみせる。
閉じこもっているだけでは何も変わらなかった。
ううん、違う。
変わらないどころか、わたしを思ってくれているパパとママ、そして陽向にずっと心配をかけさせていた。
猫町に来て、みんなに出会えて、このままじゃだめなんだってやっと分かったの。
自分の気持ちに素直になることが“自分のため”って考えれば躊躇してしまうけれど、
わたしを大切に思ってくれている人のためなら勇気が出る。
わたしが大切に思っている人のためなら力になる。
踏み出すのは怖いけれど、きっとそれ以上に大事なことに出会えるはず。