猫の湯~きみと離れていなければ~
「本当によいのですね? 」
そうやって聞いてくる鳳凰は微笑んでいて、わたしの決意を分かってくれているように感じた。
「はいっ」
わたしははっきりと答えると凰玉を返した。
「鈴、貴女に会えて本当によかった」
鳳凰はわたしを引き寄せるともう1度優しく抱きしめてきた。
背中にあてられた手がとてもあたたかくて安心する。
でももうお別れなんだと寂しくもなり、思わず鳳凰を抱きしめかえした。
「鈴と陽向が笑顔になりますように。そして、流を頼みましたよ」
「…はい」
うなずいた次の瞬間、わたしは猫町を見下ろす神社の階段の上に座っていた。