猫の湯~きみと離れていなければ~

出掛けたときと同じように、わたしたちは裏口からそっと猫の湯にもどった。


こんな時間ならもう見物客はいないんだろうけど、みんな疲れて寝ているかもしれないし。


それでも起きていて欲しいなって思いながら居間をそーっと覗くと、疲れきった表情を浮かべた4匹が待っていてくれた。


みんなも気がついていたんだね。
わたしが向こうに戻るときがきたのを。


「もしかして寝てないの? 」

「鈴は黙っていなくなりそうだからねぇ、起きてるしかないだろ」


少し怒ってる?
いつもより強めの遇の口調がうれしくなってくる。

確かにほんの少し前までのわたしなら起こさずにいたかもしれない。
置き手紙ぐらいは残すけれど。


でも今は違う。
わたしはちゃんとお別れしたいから。


「寝ててよかったのに。無理矢理起こすに決まっているじゃない」

「へぇ? じゃあ、静かに帰ってきたのはどこのどいつだい? 」


…確かに

それ以上は言えなくなって、遇とわたしは笑いあった。



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