猫の湯~きみと離れていなければ~
「鈴さん、鳳凰様たちはどんなお方だったにゃ? 」
「わたしがお会いしたのは凰様だったの。すっごく綺麗でとても優しい方だったよ」
すり寄ってきた倫は興味津々に、フンフンと鼻を制服にくっつけて鳳凰の匂いを探しはじめた。
仁はそんな倫を相変わらず冷たい視線で見ているけれど、悪態ついたり手をあげたりはしようとしていないみたい。
やっぱり何をしても合わない性格ってあるんだなって実感する。
倫に意地悪する以外でストレス発散できる何かが仁に見つかりますように。
わたしは倫を抱き上げるとしっかりと抱きしめ、小声でささやいた。
「いい倫くん? 仁がひどいことしようとしたら、猫玉でおどしちゃえばいいからね」
「そのつもりにゃ」
ニヤリと笑う倫にわたしもニヤリと笑いかえしてみた。