猫の湯~きみと離れていなければ~
そして次は仁。
でも抱きしめるほどじゃないかな。
お互いがそう思ってると思うし。
「仁、これあげる。長さんが買ってくれたんだけどね」
わたしがりんご飴といちご飴を差し出すと、当然のようにお礼も言わずに受け取った仁。
可愛げないけど、でも嫌いにはならないかな。
「どうでもいいんだけどお前さぁ、なんで俺だけ呼び捨てにしてやがるんだにゃ? 」
「あ、本当だね」
そのイライラした顔。
絶対にどうでもいいなんて思っていないよね?
「きっと……印象が悪かったからじゃない? 」
ぷっと吹き出してしまったわたしを見て、仁も少しだけ笑ったような気がした。
「仁、疲れているのに待っていてくれてありがとうね」
「勘違いするにゃ。母様がうるせーからでお前のためじゃないからにゃ。じゃ、またな」
ぶっきらぼうにそう言って、仁は部屋から出て言ってしまった。
でも『またな』って言葉を使ってくれた。