猫の湯~きみと離れていなければ~
「本当に愛想のない息子だよ」
大きなため息を1つついた遇はわたしを抱きしめてきた。
その顔はいつの間にか涙でぐしゃぐしゃになっている。
つられてわたしも涙が止まらなくなってきた。
「いいかい鈴、あんたはもうこの猫の湯の家族だよ。だからいつでも帰ってきていいんだからね」
「うん」
「何があっても負けるんじゃないよ。あたしらがついてるからね」
「それなら怖いものなしだね」
向こうに戻れば、落ち込んだり傷ついてしまうことも絶対にある。
でも乗り越えて、笑顔になってみせるからね。
「まぁ、俺が一肌脱げば1つは簡単に解決するだろうけどな」
副会長は自信満々にひげをピクピクさせている。
何が簡単に解決するっていうの?
というかやっぱり心の中を読んでるよね…?
「猫又の変な黒魔術とか使うの禁止だからね」
「…お前、まだ黒猫に対してくだらん偏見があるようだな。だいたいなぁ、黒猫というのは賢くて高貴で」
また始まった。
黙らせるためにわたしは両手をもみもみしながら副会長に見せると、ピタリと持論はやんだ。
そんなにあの姿を見られたくないのね。