猫の湯~きみと離れていなければ~

触ってもいないのに、せっせと毛並みを整えた副会長はゴホンっと咳払いをした。



「そろそろ戻るぞ。俺のしっぽを握れ」

「……うん」


宮と倫がもう1度抱きついてきた。
遇は自分の涙はほったらかしでわたしの顔を拭いてくれる。


「お前たち、名残惜しいのは分かるが鈴を送り出してやれ」


副会長の言葉に、遇は宮と倫は渋々とわたしから離れると数歩下がった。



「わたしここに来れて本当によかったです。大切なことに気づかせてもらえて、たくさんの大切な気持ちをいただきました」


笑顔でお別れしたいのに、涙が止まってくれない。

倫なんて声をあげて泣きはじめてしまった。


「鈴、…行くぞ」


副会長はわたしに背を向けて稲光型のしっぽをピンと立たせた。

これを握ればわたしの部屋。

陽向の願いをかなえるために、……帰ろう。


「みんなありがとう。…いってきます! 」


そしてわたしはしっかりと副会長のしっぽを握った。
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