猫の湯~きみと離れていなければ~

制服に着替えて部屋から出ると、洗濯カゴを抱えたママがわたしの足音に気づいたみたいで階段の下で待っていた。

寝込んでいる間、遅くまで起きて側にいてくれたのに、もう家事をしているママって改めてすごいなって思う。


「えー、学校行くの? 起きないからお休みの電話しちゃったわよ」


確かにもう2時限目が始まっている時間。


「うん。今日は午前中だけだし行ってみる」

「本当に大丈夫なの?」


ママはわたしの体の具合よりもネットのことを気にしてるんだと思う。

検索するつもりはないけれど。

でもこのまま学校に行かないわけにも…。

険悪な雰囲気だったらそのとき考えればいい。


「うん、行ってみる」


「じゃあ車で送って行くから、お化粧する間にこれよろしくぅ」


ママはわたしに洗濯カゴを渡しながら顔をまじまじと見てきた。


「ねぇ? 顔の傷どこにもないけど? 」


「最近のお薬はよく効くんだね。わたしもびっくりだよ」


そんなわけないのはママでも分かってると思う。


でも説明は長くなるし、ママはこんな話は信じるタイプ。

『猫の湯に行きたい』

って言い出すと面倒だから、わたしはさっさと2階のベランダに向かった。
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