猫の湯~きみと離れていなければ~

ベランダに出ると少し風が吹いていた。
雲が1つもない今日もいい天気。

少し遅めの洗濯だけど夕方には乾きそう。


「鈴? 」


洗濯物を干し始めると下の方から声が聞こえた。

玄関前で驚いたようにこっちを見ている莉子に、わたしも驚いてしまった。


もう学校は始まっているのに制服を着ていない莉子。
清楚で可愛い服に控えめなブランド物のバック。

門の外にはスーツ姿のマネージャーらしき人が立っていて、わたしと目が合うと軽く会釈をしてきた。


多分これからお仕事なんだと思う。



わたしは慌てて1階に降りると玄関を開けた。


「莉子どうしたの? 」

「鈴こそ動いてて平気なの? 学校を休んでるって陽向くんから聞いたから。これ、私たちからのお見舞いね」


『私たちから』か。

間違いなく莉子と陽向からってことよね。
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