猫の湯~きみと離れていなければ~
「わたしね、……陽向のことが好きなの」
「知っているわ」
やっと口に出せた言葉を、莉子は打ち消すかのように一瞬で返事を返してきた。
そしてモールのときに見せた冷たい表情にかわっていった。
「だからなに? 」
威圧感に押しつぶされそうになるけど、でもわたしは自分の気持ちを大切にしたい。
「だから、……陽向に気持ちを伝える」
「…ねぇ、何を言っているの? 陽向くんは私の彼氏なのよ? 」
「莉子から奪うとかそんなつもりじゃないの」
わたしの言葉に、莉子は呆れたように軽く息を吐いた。
「当然でしょ? 鈴に奪えるわけないじゃない。それに“ただの幼なじみ”としか思われていないって教えてあげたの忘れたの? 」
莉子を不快にさせてしまったのはわたしだけれど、『奪えるわけない』とか『教えてあげた』とかすごい言われよう…。