猫の湯~きみと離れていなければ~

付き合っていない?


わたしは莉子の言葉が理解できなかった。

あの手紙のときから2人は付き合っていたんじゃないの?
教室でもモールでもあんなに仲良くて、あんなにお似合いで。

それに莉子が『陽向くんは私の彼氏なのよ』って言ったばかりよね?


「…どういうこと? 」

「決まってるじゃない。陽向くんに近寄ってほしくなかったから、嘘をついただけよ。勝手に噂も広まってたから丁度よかったし」


堂々と話す莉子には悪びれた様子もない。


「私だってずっと陽向くんが好きだったのよ。だから鈴が引っ越していったときは邪魔者がいなくなってラッキーって思ったわ。これで私が陽向くんの側にいれるってね」


莉子にとって、わたしの存在は邪魔。

そう思われていたのには正直ショックで、体が小さく震えてくる。


「じゃあ、…じゃあどうしてわたしと文通なんてしたの? 」

「鈴と繋がっていれば陽向くんとお話する口実になるじゃない。陽向くん、鈴との話だけはしてくれていたもの」


なにそれ…。


利用していただけだっていうの?
わたしは友達だと疑うことなく手紙を出していたのに?
< 296 / 328 >

この作品をシェア

pagetop