猫の湯~きみと離れていなければ~
付き合っていない?
わたしは莉子の言葉が理解できなかった。
あの手紙のときから2人は付き合っていたんじゃないの?
教室でもモールでもあんなに仲良くて、あんなにお似合いで。
それに莉子が『陽向くんは私の彼氏なのよ』って言ったばかりよね?
「…どういうこと? 」
「決まってるじゃない。陽向くんに近寄ってほしくなかったから、嘘をついただけよ。勝手に噂も広まってたから丁度よかったし」
堂々と話す莉子には悪びれた様子もない。
「私だってずっと陽向くんが好きだったのよ。だから鈴が引っ越していったときは邪魔者がいなくなってラッキーって思ったわ。これで私が陽向くんの側にいれるってね」
莉子にとって、わたしの存在は邪魔。
そう思われていたのには正直ショックで、体が小さく震えてくる。
「じゃあ、…じゃあどうしてわたしと文通なんてしたの? 」
「鈴と繋がっていれば陽向くんとお話する口実になるじゃない。陽向くん、鈴との話だけはしてくれていたもの」
なにそれ…。
利用していただけだっていうの?
わたしは友達だと疑うことなく手紙を出していたのに?