猫の湯~きみと離れていなければ~

学校に着いたときには、もう3時間目が終わろうとしていた。
今日はあと1時間の授業しかない。


授業中に教室に入るのは目立つけれど、休憩時間にみんなの目に晒されるよりはましって思っていた。

だけど、扉をあけた途端に一斉にクラス中の視線を集めてしまった。


陽向と祥子は心配そうに。
美穂と久美子は面白そうに。
そして他のクラスメイトは好奇の目でわたしを見ている。


「…遅くなりました」


わたしは教科担当の先生に一礼すると、誰とも視線を合わせないようにして、席についた。


「鈴、大丈夫なの? 」


祥子が小声で話しかけてきてくれた。
ケガと熱とネットのことだよね。


「うん、もう全然平気だよ」


笑顔で答えたけれど。


そのつもりだったけれど、さっそくクラス中の変な雰囲気に押し潰されそうになっている。



3時間目がすぐに終わり、次の授業までの魔の休憩時間をどう過ごそうかと思っていたら、


「よく学校に来れたよね」
「あー、怖い怖い」


案の定、美穂と久美子がわたしを見ながら話はじめた。

あの2人がここまで絡んでくる理由は何なの?

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