猫の湯~きみと離れていなければ~

「なにそれ、バッカじゃないの」
「俺が証拠とか、ひくわー」


陽向の気持ちが通じるわけもない美穂と久美子が、バカにして笑いだしたとき


「うにゃにゃにゃーーんっ」



教室に可愛いらしい鳴き声が響き渡った。


窓から飛び込んできた副会長が教壇の上にどすんと座ると、教室中が一瞬で癒しのムードに変わった。


そしてみんなの視線を釘付けにした副会長は、その視線を引き連れたままわたしの机に飛び乗ってきた。


「…長さんどこ行ってたのよ? 」


小声でたずねるわたしにニヤリと笑う副会長。


そして「ごろにゃーん」とわざとらしい甘えた声を出すと、お腹を見せてゴロンゴロンとくねりはじめた。


「どうしたの? …何か変な物でも食べたの? 」


戸惑うわたしに副会長は「にゃっ、にゃっ」と少し苛立ちを見せている。


もしかして、なでろってこと?
こんなときに何考えてるのよ。


副会長のゴロンゴロンはとまらない。
お望みの通りにお腹をさすると、副会長はますますわざとらしく「ごろごろにゃーん」と甘えた声をだした。



不気味すぎる。



これ、猫町のみんなには見せられない姿だわ。


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