猫の湯~きみと離れていなければ~
陽向に話があると言ってしまった以上、もう引くにひけないし。
わたしは緊張をほぐそうと、いつものように胸のペンダントに手を添えた。
「…、あーっ! 」
「うわっ! どうした? 」
思わず出た声に陽向が驚いている。
「ごめん、なんでもない」
って、なんでもないわけない。
そして、あるわけがないよね。
わたし、猫町に陽向の凰玉を受け取りに行ったのに。
すっかり忘れていた。
というか、副会長も忘れている可能性もある…
副会長は誰に預けていたんだろ?
はじめは『あるお方』と呼ばれていた鳳凰が持っているとばかり思っていたけれど、鳳凰はそのことは何も言っていなかったし
まさか、遇に凰玉を預けてた…?
うん、それだけは絶対にないと思う。