猫の湯~きみと離れていなければ~


6年たっていても陽向がすぐに分かる。


伸びた身長と大きな肩幅、そして男らしくなった声。

でも子供の時の面影がそのままで。

懐かしさと切なさが一気に込み上げてきて、陽向がかすんでいく。

こんな気持ちになるのなんてはじめから分かっていた。


だから会いたくなかったのに。


お願い、わたし泣かないで…



唇を噛んでこれ以上涙が出てこないように、別のことを考えようとした。


でも陽向の声が聞こえてきて、意識が離れない。


きっと、1度でも瞬きをすれば涙が溢れてしまう。
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