猫の湯~きみと離れていなければ~

視線を感じたのか、こっちを向いた陽向と目が合うと、陽向は一瞬驚いた顔をしてすぐに満面の笑みになった。


気づかれた?!


そう思ったわたしは思わず顔を背けてしまった。
そしてすぐに後悔でいっぱいになる。

驚いただけなのに。
感じ悪いって思われたかもしれない。


ああ、もうどうしよう


「鈴っ!? 」


大きな声を出した陽向は、走り寄り自分の席のイスにまたがるように腰掛けた。

その声に、クラス中の注目が一斉にわたしへと集まったのをひしひしと感じる。


…本当に最悪。


「えっ! なに、あなたたち知り合いなのっ? 」


祥子は興奮したらしく、陽向とわたしを交互に見ながら、わたしの腕をバンバン叩いてきた。
これがけっこう痛いけれど、今はそれどころではない。


「来るの遅っ、何してたんだよー」

「…ごめんなさい。あの、準備に時間かかって」

「なんで謝るんだよ? 」


どうしよう、陽向が目の前にきちゃった。

このまま顔を背けているのは不自然過すぎだし。


涙もう出てないよね?
顔赤くないよね?
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