猫の湯~きみと離れていなければ~
勇気を出して顔を向けると、陽向はニコニコしながら返事を待っている。
目の前にある笑顔に、心臓が壊れてしまいそうなぐらい鼓動しだした。
体中が熱くなっていくのが分かる。
どうしよう。
こっちを見ないで欲しい。
でもまたこれで顔をそらしたら、それこそ感じが悪いって思われるよね?
でも陽向は、わたしがごちゃごちゃ考えている事なんて全く感じていなさそうで。
ただ再会を喜んでいるような純粋な笑顔。
その懐かしい笑顔が安心させてくれて、くすぐったくなってきて、わたしは自然に微笑んでしまった。
何度も『久しぶりー』とトレーニングした苦労が一瞬で無駄になってしまった。
それにほんの数秒前まであんなに緊張していたのに。
まだドキドキがおさまる様子はないんだけれど。
なのに今は、子供のときのように普通に話せそうな自分に少し驚いてしまう。