猫の湯~きみと離れていなければ~

「ってか鈴、髪のびたなー」

「え? そお? 」


陽向はまじまじとわたしの髪を見てくる。


のびたなーって子供のときもこれぐらいの長さだったよね?

誰かと勘違いしてる?


中学に入って1度バッサリと切ったけど、それからここに戻ってくるって決まってからまた伸ばしはじめたけど。


ああ、そうか。


ママが遊びに行ったときにわたしの写真を見せていたのかもしれない。


うん、それしか考えられない。


だとしたら、わたしと同じように陽向もわたしのことを色々知っているって考えた方がいいのかな?



…帰ってママを問い詰めなきゃ



「陽向は少し切った方がいいよ。またママに頼んでおこうか?」


これ以上見られるのが耐えきれなくなって、恥ずかしさを隠すためにわたしは意地悪な質問をしてみた。


陽向の目にかかりそうな前髪が少し気になったけれど、それはそれで似合っているとは思う。


「うわー、絶対にやめてー。…あの丸坊主事件は俺の心の染みになってんだからなー」


陽向は思い出したくもない過去の出来事を呼び起こされて、勘弁してくれというような顔をしながら笑いだした。


それにつられてわたしも笑ってしまう。
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