猫の湯~きみと離れていなければ~

水色の空に小さな飛行機が白い線を引っ張りはじめた。

きらきらと太陽の光を踊らせている川沿いには、桜の木がずらりと続き、この日に合わせたかのように満開に咲き誇っている。


窓を額縁に見立てるとすれば


「入学式」


そんな題名が一番に思い付きそうなこの理想的な春の景色を、わたしはブラウス1枚の姿でベットに座わり、何度もため息をつきながら眺めていた。


ここで粘っていたって、
どうせ行かないといけないのはわかってるけど…


「鈴(すず)ーっ、仕度まだ終わらないのー? 入学式始まるわよー」

「…はーい。あと少しー」


1階からのママのせかす大きな声に、はいはいと思いながら適当に答え、時計を見ると入学式まであと1時間30分。

まだ着替えてもいないのがバレたら、口うるさく面倒になるのは目に見えている。


タイムリミット。


もう準備を始めるしかない。

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