猫の湯~きみと離れていなければ~

声の正体は祥子だった。


祥子はわたしと二人の間を隔てるように立ち上がっていた。

後ろからでは見えないけれど、さっきの口調からだとかなり怒っているように感じる。



「はぁ? 別に祥子に言ったわけじゃないじゃん」
「あんた、まじうざい。引っ込んでてよ」


美穂と久美子はケンカ口調で祥子に言い返した。


頭に血がのぼっているのか、先ほどまで陽向に見せていた女の子らしい話し方はすっかり忘れているみたい。


呼び方からして、どうやら祥子たちは知り合いっぽい。

多分同じ中学の出身なのかもしれない。



そうだとすると『仲のいい友達とクラスが離れた』と言っていたから、美穂と久美子とは仲が良いってことではないことになる。

この状況だけを見ると仲が悪いっていう確率がかなり高いけれど。
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