猫の湯~きみと離れていなければ~
「でもさぁ、この人の言うように俺の友達の感じって何なんだ? お前らは俺と知り合ったばっかなのに、俺の何を知ってんの?」
今度は陽向が困ったような顔をして、でも穏やかな口調で美穂と久美子にたずねた。
「逢坂くんの友達とか親しい人って、莉子さんみたいに大人びてて華のある人のイメージだったからね」
「そうそう。ちょっと驚いただけで、別に深い意味はないんだよぉ」
どうしてここでわたしと莉子を比べるの?
莉子の名前がチクリと胸をさしてきたけど、それよりも、この一瞬で美穂と久美子が女の子に戻っていったことに驚いてしまった。
その変わり身の速さに呆気に取られそうになる。
どうやら陽向もそのことに気がついたみたいで、少し笑いそうになったのをグッと我慢したように見えた。
「俺、友達をイメージで選んだりはしてないつもりなんだけどな。莉子は莉子、鈴は鈴だしなぁ。まぁ何かの縁でせっかく同じクラスになったんだから、みんなで仲よくしよーぜ、なっ? 」
わたしをかばうために2人をなだめる陽向の言葉が、逆にわたしの胸を締めつけてくる。