猫の湯~きみと離れていなければ~

出席確認と先生からの短い話が終わると1年生は全員廊下に並ばされ、入場の為の待機をさせられた。


廊下の窓からは芝の敷き詰められた中庭が見えていて、いくつかの猫足のベンチが木陰に設置されている。


お昼休みにあそこでお弁当食べたら気持ちいいだろうなぁ


なんて思いながら眺めていると


「ねぇねぇ、鈴」


祥子が列を離れてわたしの横に並んできた。

驚くわたしに祥子はへへっと笑っている。


「ちょっと話そうと思ってね」

「でももうすぐ入場だよ? それに、…戻っていたほうがいいんじゃないの? 」


勝手に移動している祥子が怒られるのが心配になってきて、わたしはチラッと担任の先生を見た。


「大丈夫でしょ? 1回の点呼ぐらいで担任が全員の顔と名前が一致してるわけないだろーし」


まぁそう言われればそうだけど、小心者のわたしにはとてもできそうにない。
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