猫の湯~きみと離れていなければ~

よいしょっと無理に体を立たせると、ハンガーに掛かっている制服に手をのばして、渋々と着替えをはじめた。


真新しいブレザーに袖を通すと、慣れない重さと動きにくさに、体が型にはめられてしまったような気分になってくる。


そのせいか、

喉の奥がつまるような息苦しさを感じてきた。


新鮮な空気を求めて窓を開けると、少し強めの風がわたしの髪を揺らしながら部屋の中へと飛び込んでくる。


体中を膨らませるように意識しながら、大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出してみたけど息苦しさは何も変わらない。


「まだなのー? ママ先に行くわよー」

「あと少しだってば」


『先に行く』なんて子供に使うような脅し文句。


もうすぐ16になるっていうのに、いつまでも子供扱いをしてくるママを、少しうっとおしく思いながらも同時に愛情も感じる。


これ以上待たせると部屋に乗り込んでくる予感。


仕方なく窓を閉じて鏡の前に立つと、身だしなみをチェックした。
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