猫の湯~きみと離れていなければ~
「あ、あれ見て。この学校の名物猫、副会長がきたよ」
「…名物猫? ……って、あれ?! 」
祥子は中庭をのっしのっしと歩く黒猫を指差した。
あのたぷたぷのお腹は間違いない。
今朝、うちの前にいたあの黒いデブ猫だ。
またわたしの前を横切って行くつもり?
というかあのしっぽの形はなんなの?
今朝は気がつかなかったけど、黒猫のしっぽは稲光のようなギザギザの形をしている。
「で、その、…学校名物ってなに? 」
その名称だけで、これからあの不気味な猫を何回も目にすることになるんじゃないかと、嫌な予感がしてくる。
「あの黒猫は学校にずっと住み着いてる猫で、生徒会の副会長を任されてんの。名前もそのまんまで副会長。この辺りでは有名な話だよ?」
猫に副会長をまかすってどういうこと?
それに住み着いてるの?
もう最っ悪だわっ
「あっ! 副会長じゃんっ! 長さーーーんっ」
突然、陽向が大声を出したかと思うと、窓をあけて身をのりだすように黒猫の副会長に手を振りだした。
陽向も最っ悪