猫の湯~きみと離れていなければ~
教室に近づくと、陽向の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
ほらね、やっぱり陽向は帰っていない。
わたしを待っててくれていた。
最悪を想像していた自分がほっとしているのが分かる。
でも、他にも誰かいるの?
扉をあけると、教室内には陽向と寄り添うように1つのスマホを見て笑い合っている女子生徒がいた。
長くてゆるやかなウェーブがかかった大人っぽい髪型。
そしてテレビで見るよりも遥かに綺麗で小さな顔。
名前を聞かなくても誰かはわかる。
―― 山城 莉子
どうしてここに莉子がいるの?
入り口に突っ立ったまま一歩も動けなくなったわたしに、陽向が気づいて声をかけてきた。
「鈴おせーぞー」
「わー本当に鈴だ! すっごく久し振りじゃない 」
再会を喜んでくれる莉子の笑顔は可愛いらしい。
でもどうして同じ制服を着ているの?