猫の湯~きみと離れていなければ~

「それより鈴ちゃんはもう見たの? これ陽向くんの飼ってる猫の動画、」

「ってか、腹へらね? 」


楽しそうに画面を向ける莉子の手からスマホを取り上げた陽向は、莉子の頭をつついた。


「ふふっ、じゃ陽向くんのおごりでモール行こ。私、仕事があるからすぐに帰るけど」

「仕方ねぇなー」


そう言って莉子は陽向の腕を支えにしてぴょんと立ち上がった。


「ごめん。わたしお腹すいてないから先に帰る」


あの手紙をもらった時から分かってはいたのに。
でも目の前で仲の良い二人を見るのはやっぱり辛い。


「なーに言ってんだよ。待たせておいてそれはないだろ? 」


確かにその通りなんだけど。
他に断る理由が見つからない。

陽向に完全に脱走路を塞がれてしまったわたしは、うなずくしかなかった。



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