猫の湯~きみと離れていなければ~
肩を並べて歩く2人に続くように、邪魔にならないようにわたしは少し後ろをついていった。
陽向が気を使って振ってくる話しにあいづちを打つ程度で、2人の会話に自分から入っていくことができない。
『美男美女のカップルって素敵ねぇ』
祥子の言葉、そのままの2人。
それに見かけだけじゃない。
莉子からは自信と余裕を感じる。
自意識過剰とかではなくて、子供の時から芸能界という特殊な社会で働いている彼女にしか分からない、苦労や経験が自信に繋がっているよう思えた。
推測でしかないんだけれど。
陽向は、県の選抜選手に選ばれるほど充実した中学生活を送ってきているし。
それに比べると、わたしには夢も目標もない。
中学の時だって、部活も勉強も適当にこなしてきただけ。
この学校を選んだのだって、家から近いから。
ただそれだけの理由だった。
こんなわたしがこの2人といるのは完全な場違い。
惨めな気持ちがどんどん大きくなっていった。