猫の湯~きみと離れていなければ~
何度かママに見てもらったけど、そんな時に限って動きはしないし、模様の花が咲いたことなんて『はいはい』となだめられ、まったく信じてもらえなかった。
そろそろ変えないと切れちゃうかなぁ
ペンダントを手に取ると、わたしはほつれ始めている紐をねじるように触った。
何本もの糸を織るように作られている紐は、すぐに切れるというほどではないのだけれど、いつも身につけているせいで、とんぼ玉に接触している部分が毛羽立ちはじめていて、他よりも少し細くなっている。
別の紐に交換しないといけないとは思っているのだけれど、気に入った物が見つからずに今日までそのままにしていた。
わたしは祈るようにとんぼ玉を両手で優しく包みこんだ。
だからといって、何かを願っているわけでもないのだけれど、切ない気持ちが薄れる感じがして落ち着くから。
いつの間にかこれが朝の日課になってしまっていた。
そして首にかけると、誰の目にも触れられないように制服の中にしまった。
大切にしていることがばれてしまうのが嫌だから。
この気持ちを知られてしまうのはもっと嫌だから。