猫の湯~きみと離れていなければ~
川沿いの桜並木。
わたしたちは家に向かいながら並んで歩いていた。
陽向の家は逆方向だし送らなくてもいいって言うのに、陽向は1歩も引いてはくれなかった。
新しく建てた我が家をどうしても見たいらしい。
まだそんなに片付いてないから、ママは絶対に家にあげないはずだけど。
それに藤子おばちゃんからの
『必ず家まで送りとどけること』
という命令。
藤子おばちゃんってば、わたしが迷子になるとでも思っているに違いないんだから。
いくらわたしが方向音痴でも、6年ぶりの町だとしても家ぐらいは帰れるのに。
おばちゃんにとってもママにとっても、わたしはいつまでたっても子供のまんまなんだろうなって思う。