猫の湯~きみと離れていなければ~

「ってかさー、鈴は小さくなったな」


陽向が少し意地悪そうに笑いながらわたしを見下ろしきた。


「陽向が大きくなりすぎなの。わたしよりチビだったのに」


わたしの頭の位置は陽向の肩より低いぐらい。
完全に逆転してしまってて、さすがにもう抜きようがない。

ほんのちょっぴり悔しいかな。



「背が高いってだけで鈴はいっつもお姉さんぶってたよな。俺が友達とのケンカで負けたら、いつもやり返しに行ってくれてたし」

「陽向が泣き虫だっただけよ 」


そう言われれぱ、わたしは以前はかなり活発な子供だった気がする。人見知りもなくて、初めて会う人にも平気で話かけていたっけ。


いつからこんなに人見知りと引っ込み思案な性格になっちゃったんだろう。

相手が心を許してくれているって感じたときしか、自分を出せないでいるような気がする。


陽向がわたしの雰囲気が変わったっていうのはそこかもしれない。



「俺、本当は悔しくてさぁ、毎日牛乳飲みまくってたんだからな」

「え? だって陽向、牛乳飲んだらお腹ぐるぐるって」


お腹がゆるくなってしまうのに、頑張って牛乳をのむチビ陽向の姿を想像すると、可愛すぎて思わずクスクスと笑いが出てしまった。

前の学校の友達に張り合ったりとか、もしかして陽向って負けず嫌い?



「なんだよー、笑うなよー。あっ、鈴、あれっ! 」


一緒になって笑っていた陽向が、突然大きな声を出した。

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