猫の湯~きみと離れていなければ~

「ほら見て、あれ副会長の長さんじゃんっ」


陽向が手を振る先には黒い塊があった。


それだけで嫌な予感がする。



陽向に呼ばれた黒い塊はこっちを向くと、あの独特な稲光形をしているカギしっぽを立てた。

そして、大きなお腹を左右にたぷたぷと揺らしながら、こちらに小走りで向かってきている。


「長さん! こんなところまで見回りしてんの? 」

「にゃーん」


やっぱり、また、あのデブ猫っ!


わたしは慌てて、陽向の背中にまわって姿を隠した。


「ごめんっ、わたし猫が苦手なの。特に、特にその猫っ!」

「は? なんで? 長さん怖くないし 」

「そのあだ名もなに? やだやだ来ないで、呼ばないで!」

< 91 / 328 >

この作品をシェア

pagetop