猫の湯~きみと離れていなければ~
「ほら見て、あれ副会長の長さんじゃんっ」
陽向が手を振る先には黒い塊があった。
それだけで嫌な予感がする。
陽向に呼ばれた黒い塊はこっちを向くと、あの独特な稲光形をしているカギしっぽを立てた。
そして、大きなお腹を左右にたぷたぷと揺らしながら、こちらに小走りで向かってきている。
「長さん! こんなところまで見回りしてんの? 」
「にゃーん」
やっぱり、また、あのデブ猫っ!
わたしは慌てて、陽向の背中にまわって姿を隠した。
「ごめんっ、わたし猫が苦手なの。特に、特にその猫っ!」
「は? なんで? 長さん怖くないし 」
「そのあだ名もなに? やだやだ来ないで、呼ばないで!」