猫の湯~きみと離れていなければ~


「お! 風森家の表札はっけーん。おーい鈴母さーんっ」


わたしの家を見つけた陽向は、この気まずい雰囲気を入れかえるように遠慮なくチャイムを連打で鳴らした。


「陽向うっさいわよっ! 鈴はおかえりなさい 」


勢いよく開けられた窓から顔を出したママが、大きな声で注意したけれど、陽向は怒られ慣れているのか何とも思っていないみたい。


「すっげぇでかい家じゃん! 早く開けて開けて 」

「まだ片付いてないから今日は帰ってちょーだい。今度藤子と一緒に新築祝い持ってきなさいね。じゃ、ごゆっくり~」


ママはピシャンと窓を閉めると、忙しそうに家の中に戻っていった。


「あげてくれないのに、ごゆっくりってなんなんだよ? 」


ケラケラ笑う陽向に、わたしもつられて一緒に笑ってしまう。
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