感染学校~死のウイルス~
その目は血走っていてまるで獣のようだ。


いくつも積み重ねられていた段ボールはあっという間に空になって行く。


「あっ……」


思わず、準備室の方へ足が向いた。


このままじゃあたしの食べ物がなくなってしまう。


「やめなさい!!」


森本先生が必死でみんなを止めている。


「愛莉……」


空音があたしの制服を引っ張る。


その目には涙が浮かんでいた。


あたしはグッと足を踏ん張り、その場に止まった。


あたしまで一緒になって食料を奪うわけにはいかない。


でも、今ならまだ食料が残っている。


心がグラグラと揺れるのを感じる。


「これは俺のもんだ!」


「せめて水をちょうだい!」


「離してよ! それはあたしが先に取ってたんだから!!」


そんな声を聞きながら、あたしはぼんやりと考えていた。


そうだ、校内の水は出るんだ。


校内の水は生徒たちが外から戻った時にすぐ飲めるようになっている、とても綺麗な水だ。


そう思うと心が安定していくのを感じた。


飲み物はある。


後は食べ物だ。


食べ物なら、きっと購買にもあるはずだ。
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