感染学校~死のウイルス~
見かねた森本先生が男子生徒に近づいていく。


が、恐怖を押し殺して近づいていくのが見ていてわかった。


「森本先生、俺が行きます」


辻本先生がすぐに駆けつける。


その様子に一瞬胸が痛むのを感じた。


辻本先生はあたしも含めてみんなを守ってくれている。


だけどそれはあたしが生徒だからだ。


森本先生への対応を見ていると、あたしとは違うものを感じてしまう。


「おい、大丈夫か?」


辻本先生がそう声をかけて男子生徒の肩に触れた。


その時だった。


いままでうずくまっていた男子生徒が急に顔をあげ、「あああああああ!!!」と、大きな雄たけびを上げて自分の頭をかきむしりはじめたのだ。


「お、落ち着け! 大丈夫だから!」


辻本先生が慌てて止めに入るが、男子生徒は辻本先生を突き飛ばして更に自分の頭をかきむしった。


短い髪の毛が体育館の床に落ちていく。


「大丈夫よ、心配ないわ!」


森本先生もそう声をかけるけれど、男子生徒には聞こえていないようだ。


必死に自分の頭をかきむしり、声を張り上げる。
< 161 / 284 >

この作品をシェア

pagetop