感染学校~死のウイルス~
☆☆☆
5月12日。
いつものように空音と合流して学校へと向かった。
校内はまだ少し騒然とした様子を残していたが、随分といつもの雰囲気を取り戻していた。
大声でバカ騒ぎする生徒はいないけれど、明るい話し声は聞こえて来る。
そんな声を聞いていると安心すると共に、少しだけ胸が痛くなった。
日常ってこんなにも簡単に戻って来るんだ。
たとえば亡くなったのが渋田さんじゃなくてあたしだったとしたら?
渋田さんのように人望もなく、特別明るいワケでもないあたし。
もしかしたら、訃報の連絡が回っても周囲はなにも変わらないのかもしれない。
そう思うと、途端に背筋が寒くなった。
「あ、おはよう!」
教室までの廊下を歩いていると突然後ろから声をかけられて、あたしと空音は立ち止まった。
振り向くと、そこには昨日駅で会ったおさげ髪の女の子が立っていた。
相変わらず顔色が悪いが、笑顔を浮かべて手を振っている。
同じ3階にいるということは、やっぱり一年生の子だったようだ。
あたしと空音はほぼ同時に手を振りかえしていた。
「おはよう。体調はもう大丈夫?」
「うん。もう『わかった』から大丈夫だよ」
彼女はそう言いあたしたちを通り過ぎていく。
「わかったって、なに?」
通り過ぎざまあたしはそう聞いたけれど、彼女は何も言わずにD組の教室へと吸い込まれていったのだった……。
5月12日。
いつものように空音と合流して学校へと向かった。
校内はまだ少し騒然とした様子を残していたが、随分といつもの雰囲気を取り戻していた。
大声でバカ騒ぎする生徒はいないけれど、明るい話し声は聞こえて来る。
そんな声を聞いていると安心すると共に、少しだけ胸が痛くなった。
日常ってこんなにも簡単に戻って来るんだ。
たとえば亡くなったのが渋田さんじゃなくてあたしだったとしたら?
渋田さんのように人望もなく、特別明るいワケでもないあたし。
もしかしたら、訃報の連絡が回っても周囲はなにも変わらないのかもしれない。
そう思うと、途端に背筋が寒くなった。
「あ、おはよう!」
教室までの廊下を歩いていると突然後ろから声をかけられて、あたしと空音は立ち止まった。
振り向くと、そこには昨日駅で会ったおさげ髪の女の子が立っていた。
相変わらず顔色が悪いが、笑顔を浮かべて手を振っている。
同じ3階にいるということは、やっぱり一年生の子だったようだ。
あたしと空音はほぼ同時に手を振りかえしていた。
「おはよう。体調はもう大丈夫?」
「うん。もう『わかった』から大丈夫だよ」
彼女はそう言いあたしたちを通り過ぎていく。
「わかったって、なに?」
通り過ぎざまあたしはそう聞いたけれど、彼女は何も言わずにD組の教室へと吸い込まれていったのだった……。