感染学校~死のウイルス~
「田井先生……実はあたしも、田井先生みたいな先生になりたいなって、ぼんやりとですけど思ってるんです」


空音がそう言うので、あたしは「そうだったの!?」と、聞き返していた。


空音は照れたように笑って「うん」と、頷いた。


「あら、それはとても嬉しいわね」


田井先生も照れたようにそう言い、森本先生は「素敵ですね」と、ほほ笑んだ。


「田井先生は覚えてないかもしれないんですけど、入学式のときにあたしシューズを忘れて来たんです。


これから学校が始まるって言うのにシューズを忘れてくるなんて、なんてドジなんだろうと思って、自分にガッカリしてました。


今日の入学式は来客用のスリッパで参加するしかないんだって……。そんな時に声をかけてくれたのが田井先生だったんです」


空音の話に田井先生は一生懸命その時の事を思い出そうとしている。


「『今日は入学式ね、頑張って』そう言って、あたしに真新しいシューズを差し出してくれたんです」


「そう……そんなことがあったかもしれないわね」


田井先生は思い出せないのか、申し訳なさそうな表情を浮かべている。


田井先生からすればすぐに忘れてしまうような些細な出来事でも、空音にとっては将来の夢を決める出来事だったようだ。


「ここから出られるかどうかわからないですけど、もし出ることができたら、あたしは先生を目指そうと思います」


そう言うと、空音は嬉しそうに笑った。
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