感染学校~死のウイルス~
少しずつ凹みは大きくなり、傷ついていく。


空音の金槌が同じ個所を殴り続けていたため、シャッターに亀裂が走った。


今にもバリバリと音を立てて崩れ落ちそうだ。


微かに感じる期待を胸に、あたしたちは繰り返し殴りつけた。


もっと早くこうしていればよかったんだ。


途中で諦めずにずっとずっと殴り続けていれば、きっと外へ出る事ができる。


あたしはシャッターを殴りつけながら、死んでいった生徒たちを思い出していた。


渋田さん、友菜ちゃん、真哉先輩、アラタ先輩、祐矢先輩。


他にも沢山、こんなことになったから知り合う事ができた生徒たちを思い出す。


「な……んで……」


思い出しながら涙があふれてきて頬を濡らした。


なんで、もっと早くみんなで協力し合わなかったんだろう。


全員が力を合わせてシャッターを壊せば、もっと早く外に出る事ができたかもしれないのに。


隔離状態で混乱して、感染者に怯えていたせいで、そんな事にも気がつく事ができなかった。


殺し合い、逃げ惑い、涙と悲鳴に包まれてしまった。


シャッターの割れ目から光がさしこんだ。


久しぶりに見る太陽の光だ。


その光に、涙で視界は歪んでいった。


次から次へと零れ落ちる。


「なんでなんだろうね……」


震える声でそう言った。
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