感染学校~死のウイルス~
「そうよ。彼らはみんな渋田さんの自殺をその場で見ている。そして今彼らは自分も死にたいと訴えていること」


先生の言葉にあたしは呼吸を止めた。


保健室にいる男女6人を見る。


その誰もが焦点が合わない目をしていて、彷徨っているように見える。


よく耳をすませてみれば「死にたい、死にたい」と繰り返しているのがわかった。


「それって……渋田さんの自殺に感化されてるってことですか?」


空音が聞いた。


「わからないのよ。感化されるにしても、彼女の自殺を見てしまった全員がこんな風になるなんて、思えない。


とても強いショックを受けたのはわかるけれど、ちゃんと学校には登校して来ているし、こうして自ら体調不良を訴えて保健室にも来てるし……」


そう言い、森本先生はため息を吐き出した。


生徒の自殺を目の前で見てしまったら、そのショックは計り知れないだろう。


けれど、目の前の状況はあまりにも異質なものだった。


「死にたい、死にたい」


と呟きながら部屋の中を徘徊する様子は、まるでゾンビのようだ。


ずっと見ているとこちらまで気分が悪くなりそうで、あたしと空音は早々に保健室を後にした。


森本先生を1人にしておくのは不安だったので、途中別館の職員室に足を運び、辻本先生に保健室の様子を話しておいた。


教室に戻って窓の外へ視線を向けると、太陽が雲に隠れて今にも雨が降り出しそうな気配を感じたのだった……。
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