感染学校~死のウイルス~
「誰?」


できるだけ相手を刺激しないよう、優しい声でそう聞く。


「その声は……中山さん?」


くぐもった声がベッドの下から聞こえてあたしは慌ててしゃがみ込んだ。


ベッドの下をみると、白い目がこちらを見ていた。


「森本先生!?」


「あぁ……中山さん、よかった……」


森本先生はホッとしたように笑顔を浮かべ、同時に大粒の涙を流し始めたのだ。


「愛莉、先生いたの?」


あたしの声を聞いて空音が保健室へと入って来た。


「うん。ベッドの下に」


「ベッドの下?」


空音がベッドの下を覗き込むと、森本先生はしゃくり上げながら這い出て来た。


髪の毛はボサボサに乱れ、頬にはひっかき傷のようなものが見える。


「森本先生大丈夫ですか?」


「大丈夫よ……」


そう言う声はひどく震えている。


「一体なにがあったんですか?」


続けて聞くと森本先生は何かを思い出したように強く左右に首を振った。


「わからない……わからないの……」


あたしは空音と顔を見合わせた。


森本先生がここまで混乱している所なんて、見たことがなかった。
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