感染学校~死のウイルス~
「ん? あぁ、大丈夫わかってる。もうすでに何人かの先生が殺されてる。それを見て俺も逃げて来たんだ」


辻本先生は険しい表情でそう言った。


「何人かの先生が死んでいるということは、その人数分の生徒はすでにウイルスが消えていると言う事だ。こんな言い方は良くないけれど、感染が止まったという点ではよかったと思うんだ」


辻本先生の言葉にあたしは頷いた。


確かにそうだ。


犠牲になった先生たちには申し訳ないけれど、感染者が自殺をしてウイルスをまき散らすよりはマシだと思えた。


辻本先生はそのための生贄……。


そう考えると胸が痛んだ。


辻本先生なら自分からその犠牲になりそうな、そんな予感がしていた。


職員室の前まで来ると辻本先生は立ち止まり、あたしたちに外で待っているように指示をした。


「辻本先生はすごいね」


外で街ながら空音がそう言った。


「そうだよね。こんな状況なのに冷静だし、あたし達の事を考えてくれてるもんね」


あたしは空音の意見に賛同してそう言った。


若くてパワフルだということが、余計に正義感に繋がっているのかもしれない。


「ほら、これなんかどうだ?」


しばらくして先生が戻ってくると、その手にはスタンガンが握られていた。


「なんですか、これ?」


空音はスタンガンを受け取りながら首を傾げた。


黒くて長方形な道具は、パッと見じゃなにかわからない。
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