感染学校~死のウイルス~
「護身用のスタンガンだ。防犯ブザーもあるぞ」


辻本先生はそう言うと、あたしと空音それぞれに防犯ブザーを渡してくれた。


今こういうグッズが必要なのは先生のほうなのに……。


そう思いながらも、あたしは防犯ブザーを受け取った。


「職員室って色々なものがあるんですね」


渡り廊下を歩いて本館へと移動しながらあたしはそう言った。


「あぁ。最近は物騒になってきたし、先生たちも色々と警戒しているんだ。特に若い女性の先生なんかは生徒から狙われる時もある。スタンガンは頼経先生の私物なんだよ」


辻本先生にそう言われてあたしはスタンガンを見た。


3年生の数学を担当している頼経先生は若くてとても綺麗な先生だ。


それだけでも男子生徒の標的になることはあるだろう。


先生でも身の危険を感じる事があるのだと知ると、なんだか少しだけ安心できた。


あたしたち子供はもっと声を上げて不安を知らせてもいいんだと思えた。


小さな不安でも、大きな不安でも、恥ずかしがる必要なんてない。


とにかく大人に知らせて助けてもらっていいんだ。


この状況でそんな事を知っても、役立つかとうかわからないけれど。
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